一匹の犬との出会いから作品制作が始まった。その犬の毛は汚れ、肋骨の形が浮き上がるほど痩せ細っていた。おぼつかない足取りで歩いていたその犬は警察に保護される時激しく抵抗をした。その光景を見てペットブームと言われる現代の裏側に疑問を感じた。その後、私は地元の保護施設を訪ねた。
保護施設のドアを開けた瞬間、多数の犬の目に圧倒された。そこには、ペットブー ムの裏側に潜む人間のエゴ、それに翻弄される犬の現実があった。初めて足を踏み入れた保護施設での、無数の犬たちから向けられた瞳。その一瞬から私は、顔だけにこだわり撮影することを決めた。